東京大空襲 下町炎上 ?後記?

 劇場に遅刻する夢を見て飛び起きたが、すでに公演は日曜に千穐楽を終えていたではないか。気付くまでに数秒かかり、安堵と少しの残念さとともにもう一度布団に潜り込んだ。

前略 布団の中より。
 さて、通し稽古が大詰めを迎えるまでは東京大空襲を語り継がねばという強い思いが煮えたぎっていたが、難しい芝居の反復稽古を繰り返すうちに、当初の気持ちを半分ほどどっかにおき忘れていたように思う(面目無い)。しかし、ぎりぎり千穐楽の前夜に気持ちが再び沸いた。74年前の今が東京大空襲の始まろうとしていた時刻だったのかと時計を見やると、何か時間が当時と一緒に動き出したような気分になって、いてもたってもいられなくなり、出演者のラインに「気持ちを一つにしたい。明日の開演前に円陣を組みたい」と呼びかけた。全員が賛同してくれた。
 ところで、自分は桐谷という郵便屋さんの役を与えられた。子息が戦死したという当局からの通知を親に届けるというなかなかの役どころだ。役の難しさはさることながら、勤務中の郵便屋さんとなればまず格好が仕上がっていなければ話にならない。つまり、制服と自転車の用意が必須だったということ。結論から言うとその両方ともを舞台道具屋さんから借りたのだが、ヤフオクやメルカリを始め自治体の撤去自転車を追ったり、両国の自転車屋さんに協力を求めて歩き回ったりと、まずはダメもとで手は尽くしてみた。というのも、いきなり自転車を貸し与えられるより、自分で探し回った後にめぐり逢えたチャリの方が愛おしくて使い慣れている感が出ると思ったからだ(芝居ができればそんな手間いらんのだがね)。94f353a2.jpg


?両国の自転車屋さんの話?
 芝居の会場となるシアターΧの場所をまだ知らぬ1月に両国を歩いた。鼠小僧の墓で有名な回向院を挟むように2軒の自転車屋があった。田中輪業さんとスポーツサイクルいちかわさんだ。ネットの口コミは最悪で近寄ると怒られるとまで書かれているものまであった(どんな店だ)。こういう店は自分の仕事に自信のある職人さんの場合が多い(ような気がする)。元気よく要求を整理してきちんと伝えれば話ぐらいは聞いてくれるだろう。「自分は3月にこの両国で上演する東京大空襲という舞台で郵便屋の役を与えられていて劇中で使う古めかしい自転車を探しています。情報だけでもご協力をお願いしたいのですが」案の定、両方の自転車屋さんは時間を割いてよく話を聞いてくれた。結局は安価な古い自転車の情報はもたらされなかったが、この行動があったから制作が借りてくれた赤い自転車が稽古場に届いた時は飛び上がるほど嬉しかった。
 飛び込んだ双方の自転車屋を暇する時に芝居のチラシを置いていったが、後日無礼だったことに気付き、一月後にもう一度両店に足を運んだ。「両国を舞台にした東京大空襲の芝居を両国の地元の方にご覧頂きたいというなら、ご招待しますというのが筋でした。先日は大変失礼いたしました。」そう言うと両店のご主人は初めて見る優しい笑顔で応えてくれた。

 それぞれの役者がそれぞれの役どころの小道具等に細心の注意を払っていたと思う。調べても調べてもきりがなかった。間違いとわかった上で演じなければならないことも多々あった。それでもみんな堂々とした芝居をしていた。初舞台の役者が三人もいたとはいまでも信じられない。振り返ると凄いことを成し遂げたんだなと思う。千穐楽のお客さんの拍手を聞いた時、涙をこらえるのに必死だった。また来年、できることを信じて。そして、こんな芝居が必要とされないほど次の時代が平和であることを願って。

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 お忙しい中ご来場頂いたお客様方、本当にありがとうございました。SNSやこのブログを通して見守り応援してくれた方々にも心からのお礼を申し上げます。そして、気の置けない共演者と、数多の問題を共有してくれた全てのスタッフに感謝いたします。この本があったお陰で自分は伝える側になろうと思えたのです。石森史郎先生ありがとうございました。最後に全ての責任をかぶり役者に自由に表現させてくれた藤井智憲監督に心からの感謝を捧げます。有難うございました。そして、、、、

 (暴れん坊将軍のテーマを頭の中で鳴らしながら読んでください)
 暴れん坊将軍で御庭番としてレギュラー出演されていた松元信太朗さん(下町炎上:主演)両国のお店では打ち上げが終わりませんでした。旅流が店を出る時、雨の中、信太朗さんが抱きしめてくれました。まるで今生の別れであるかのように。今月30日はゴールデン街ですぐに共演があるというのに。これを書いていて、また、きちんとお礼を言いに一人で呑みに行こうと思う旅流でした。信太朗さん、有難うございました!! 松元塾一期生/旅流草一郎


?旅流 出演情報?

大江戸ワハハ本舗・娯楽座本公演
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3月2日?3月31日
新宿ゴールデン街劇場
(旅流の出演は20日と30日)

【脚本】
噛家坊with娯楽座座付作家陣
【出演】
噛家坊、コースケ☆原澄人、村本准也、哀原友則、星川桂、矢原加奈子、
雨宮あさひ、犬吠埼にゃん、鈴木千琴、仲村唯可、吉川元祥、三宅潤

【日替りゲスト】
アジャ・コング、飯塚俊太郎、
梅垣義明、大久保ノブオ(ポカスカジャン)、
大窪みこえ、小西啓介(ふうらいぼう。)、シェフ米山(おやじバンド)、
ジジ・ぶぅ、正源敬三(3ガガヘッズ)、省吾(ポカスカジャン)、
白川和子、菅原鷹志(おやじバンド)、高橋和明(ふうらいぼう。)、
トニー淳(3ガガヘッズ)、猫ひろし、原田17才、β、兵頭有紀、村井昭彦(おやじバンド)以上、ワハハ本舗

浅野祥、おおくぼけい(アーバンギャルド)、大物ゲストK、斉藤裕之、
シークレットゲストM、旅流草一郎、なにわのてつ、松元信太朗、
観月ゆうじ、もりいくすお、守谷勇人(柿喰う客)、
山崎洋平(江古田のガールズ)





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