?前回からの続き?
とは言えだー。本番前夜に台詞が光っただの、役と自分がダブって見えただの、こういう時が一番危ないのだ。バカがいよいよ本領を発揮する瞬間だからだ。愚かだった昨日までの自分、それに気付くことの出来た自分、もうこれからは皆んなに迷惑をかけるようなことなどないのだーっ!と叫びながら力一杯あさっての方へとジャンプすること請け合いだからだ。俺はそんなにバカなのか?俺はそんなに役立たずなのか?
本番が始まり、座長を始めキャストの皆さんに意見を聞いて回りながらプランを実験し、中日を過ぎる頃にようやく自分なりのイメージした最後の台詞にまで持っていけるようになった。まだまだもたついているのは話にならないレベルであろうし、何ができるわけではないが、全身全霊の渾身の一言を言えたつもりだ。
左から『松元信太朗さん(吉良上野介の飼い猫の化け猫 役)』、『観月ゆうじさん(天草四郎時貞の飼い猫の化け猫 役)』、『旅流 草一郎(無用ノ介 役)』/早着替えで楽屋になだれ込んだ時の一コマ。キスマークのある無用の介はこのタイミングでしか撮れなかった
気が付けば満員御礼の全日程を終え、満月を見上げながら蒲田駅東口で唄っていた。すると、その夜芝居にお誘いしたがご都合の合わなかった方がわざわざ逢いに来て下さった。深夜1時過ぎに店仕舞いをしながら初めてこの方の仕事の話を聞かせて頂いた。なんでも、空港のセキュリティの顔認証システムのアルゴリズムだかゴルゴンゾーラだかの開発をされていて今度羽田で採用されたという。「そんな軍事機密をこんな雑踏で話してたら消されますよ」無用な男の無用なおちゃらけにも嬉しそうに笑みを浮かべながら、こういう世の中から無用とされていない方は決まって僕のような者を僕のような暮らしぶりをかっこいいとか憧れるとか言って下さる。今度呑みましょうときちんとした約束をされてからスーツの紳士は仕事に戻られて行った(時差のある地域にビジネスパートナーがいるんだとか)。
「あーいたいた!ワハハどーだった?」そこへ障害者手帳を持つかずおみがやってきた。「兄貴がいない間に風俗嬢に金使った?」
「また惚れたのか」
「惚れた?。ラーメン食い行こ。ただ券あるから」
「お前の券、偽造だろ!」
稽古場での最初のメイクテスト。最初の傷はこんなに盛り上がってたんですね。特殊メイクは娯楽座の村本さん!
何年か前、何のために唄っているのか分からなくなった時があった。今はそんなことも忘れて唄っているのかもしれない。ただ、この先ずっと唄っていていつか「役に立てて、嬉しい」と言える日が来るのなら唄っていたいと思う。きっとそんな日が来ると信じている。そんなことに気付かせてくれた娯楽座の芝居だった。
『化け猫ロッキーホラーショー』にお越しいただいたお客様に改めて心よりのお礼を申し上げます。また、関わった全ての関係者とスタッフの皆様に改めて心から感謝を致します。最後に娯楽座の皆さんに最大級のお礼を。皆さん本当に有難うございました!
千穐楽。スタッフ、キャスト全員で
<航海日誌>
舞台が終わった数日後にポカスカジャンのタマ伸也さんが一献設けて下さった。その席で演出家・喰始の脳内のことについて少し話してくれた。「そもそも無用の介という名前なのだから最後の最後に役に立って良かったねというのが落ち。なんならそれしかない。そして、喰さんは何も言わないけどその人の本質を見抜いていて、似たような役を与えたりする事がある。」というのだ。まーそーならそーで構わないんですけど、俺がこのブログで3話にもの長きに渡りドラマチックに書き上げた後日談を、ものの数秒で要約しないで欲しいんですがと思った。なるほど、俺の話は長いんだなという事でよろしいでしょうか?こうなったらもう長話キャラでまいりましょう!最後まで皆さんお付き合い有難うございました m(_ \\\)m
(この下にあとがきがあります) 続きを読む